2017年8月31日に北米Storeでリリースされた『Last Day of June』の感想。
インタラクティブシネマ寄りのアドベンチャー
ちょっとした謎解き要素もあるアドベンチャーゲームですが、インタラクティブシネマに近いところもある。ゲーム性は薄めです。
主人公は画家のCarl。妻のJuneを車の事故で亡くし、自身も車椅子が必要となる。
やや唐突に不思議な絵が現れて、そこからJuneの事故に関係する4人の人物を操作することになります。
例えば、子供のボール遊びが最初の事故原因なので、子供を操作してボールではなく凧で遊ばせて結果を変える。でも次は親友の車の荷台から荷物が崩れることが事故原因になり、今度はそれを変える。……が、荷台を縛るためには子供が遊んでいる凧に使っているロープが必要になり、子供の行動をボール遊びに戻さなくてはならなくなる。こんな具合に4人の行動を調整して事故を回避したいゲーム。
各人物の行動がカードで描かれる。このカードがシャッフルされて、事故原因のカードが出てくるという演出は面白い。
一応、日本語に対応しています。しかしながら、このゲームの人物は特定の国の言語を喋りません。雰囲気ゲーと言われるゲームにはよくあることですが、言葉で語らないタイプのゲーム。
最初と最後が素晴らしい
水彩画っぽい鮮やかと、にじみのある少し不安定なビジュアルがゲームの世界に合っています。現実感のない思い出みたいなところが良いです。短いオープニングシーンでもCarlとJuneの関係がわかりやすく伝わる。開始10分で「これは良さそうなゲームだ」と思いました。
ゲームのメインとなる事故を回避するパートになると、ゲームとしては物足りなさを感じました。基本的には、ひたすら事故を回避させるための行動をとるので、ストーリーー的な起伏がありません。ボールを落とさないようにするとか、荷台を縛るとか、そういう行動のスイッチを切り替えていく作業には、あまり面白味が感じられない。パズル的に考える要素があれば違ったと思いますが、簡単すぎるので作業的に感じました。
作業的ではありますが、意味は大きいです。Carlが事故を回避するために努力しているというところをプレイヤーに体験させる。ゲームならではの「自分でやる」というところが生きている。
オチは良かったです。ありがちと言えばありがちですが、表現力が高かった。近年、奇を衒うけど人間の感情が雑に処理されている作品が多いと感じているところもあり、王道をしっかり作れるクリエイターの凄さを感じる。
エンディングロール後のムービーが素晴らしかった。短いムービーですが、心を鷲掴みにされる。最後までプレイして良かったと思えました。クリア後も、このシーンを思い返し、感情を想像してしまう。
クリアまで3時間未満で、オープニングでセンスが好きになり、メインとなるゲームパートは簡単すぎて物足りなさを感じ、エンディングは心に残るものでした。ゲームとして総合的に見れば、それほど高い評価にはならないと思います。現時点でのメタスコアは73点(11件)でした。しかし、心に残る会心の1シーンが見られて、終えたときの満足度が高いですし、忘れられないゲームになりました。クリエイターの表現したかったものが、しっかり表現できているのではないでしょうか。
点数では魅力を表せないゲームでした。雰囲気ゲーと言えるのかもしれませんが、前衛芸術的な表現は少なくて、わかりやすいです。感情をわかりやすく伝える映像表現が素晴らしい。
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