怖いもの見たさで手を出してしまうVRホラーゲーム。でもホラーゲームというよりシュールで奇妙なゲームだった『ヒア・ゼイ・ライ -眠りし者たち-』。
酔いやすい
このゲームは酔いやすいです。VRゲームに酔いやすい人にはオススメできない。私は酔いにくい方ですが、少し気持ち悪くなりつつクリアしました。『Robinson: The Journey』ほどではないですが、プレイした中では5本の指に入る酔いやすさ。クリアまで2時間20分ほどでしたが、ゲーム途中で5回ほど休憩を取るようにすすめられました。開発者も酔いやすいのはわかっているみたい。
やはり左スティックで自由に移動できるゲームは酔いやすいですね。左スティックを上に倒すと自分が見ている方向に進むシステム。調整の仕方は少し面白くて、例えば左斜め前を見ながら進むと、自分が進行方向に対して正面を向くように自動で調整される。ずっと左斜め前を見る必要はなくて、進みたい方向がいつの間にか正面になっている。
右スティックは約45度ずつの角度切り替え方式。右スティックを下に倒すと振り向くのが便利。
ついでに他の操作も説明しておくと、〇ボタンで懐中電灯を照らす。懐中電灯は電池式。ホラーゲームにはよくあるシステムですが、道中で電池を拾う事で懐中電灯が使える。
×ボタンでオブジェクトを調べたり箱や扉を開ける。
L1/R1/R2のどれかでダッシュ。
夢とも現実ともつかない悪夢のような世界を探索
公式サイトに「モノクロに表現された夢とも現実ともつかない悪夢のような世界を探索するホラーゲーム。謎の女性に誘われたプレイヤーは、人の気配を一切感じられない荒廃した街の奥深くへと足を踏み入れていく……。」と書いてありますが、そのまんまのゲーム。
精神世界のような世界。どこへ向かっているのかわからないまま、ひたすら進める道を探して進む感じです。たまに文書や写真を拾う。写真を拾った時は哲学的とも電波系とも言える音声が流れる。日本語音声なのは有難い。
微妙にステルス・鬼ごっこ要素があり、クリーチャーの隙を見て進んだり、追いかけてくるクリーチャーから逃げて進む。追いかけられている時は背後からクリーチャーの声が聞こえて怖い。振り向いて確認したいけど振り向けない怖さがありました。こういうところはホラーっぽい。
酔いと操作性を考慮してか、難しいものにはなっていない。捕まるとチェックポイントからリスタートしますが、一度捕まえられたクリーチャーは消えていた。何度も同じポイントを挑戦させるようにはなっていない。もしかしたら捕まった回数がエンディングに影響するかもしれない。
多少のステルス・鬼ごっこ要素はありつつも、全体的な印象としてはウォーキングシミュレーター的でもあります。
シュール過ぎて笑った
序盤は歩いて探索のみ、中盤はクリーチャーが出てきてホラーっぽさもあり、ビックリ演出も少しあった。でも中盤途中からの演出がシュール過ぎて、ホラーゲームというより前衛的なコンテンポラリー・ダンスを見せられているような気持ちになります。恐怖よりも開発者がどういう精神状態でこれを作ったのか気になりました。主人公の精神世界を描いているのかと思いましたが、倫理観をテーマにしている気がするものの何を表現しているのかサッパリわかりません。中盤の途中からはシュールな世界に浸るゲームになっていました。わからないけど妙な面白さがあります。
本気なのかジョークなのかわからない部分もあり、笑わせようとしているのかとも思いました。ビビった回数より笑った回数のほうが多いかもしれません。
公式サイトにも「プレイヤーがとってきた選択によって変化するストーリーと結末」と書かれており、マルチエンディングっぽくて道中での行動もプレイヤーが選択できるところがあります。そういう部分でリプレイ性はありますが、酔いやすいので2周する気になりにくい。そもそも1周目のストーリーと結末がほぼ意味不明でした。1周目で意味不明なものが、2周目で別の意味不明なものに変わりそうです。もしかしたら最後の選択で別の行動をとっていれば、もっとわかりやすい結末だったかもしれないですが。
グラフィックは粗い
VRのゲームでは慣れっこですが、グラフィックは粗いです。大きな□のドットがはっきり見える場面も多々ある。テクスチャも粗い。でも不安定で不気味な世界のデザインは良い。
VRの魅力は感じられて、不安定で不気味な世界に入って歩き回れるのは特別な体験。観光要素は、このゲームの魅力かと思います。酔いは難点ですが。
奇妙なゲーム
ちなみに発売日は12/15(木)ですが、先行キャンペーンに登録していれば3日前からプレイできるようになっていました。
奇ゲーの部類入るようなゲームで、正統派ホラーではありません。私はホラー系は得意ではなく『Until Dawn: Rush of Blood』は怖すぎたのでEASYモードにして薄目でぼかしながら銃乱射でゴリ押しました。でも『ヒア・ゼイ・ライ -眠りし者たち-』は、あまり怖くなかったです。最初は得体の知れない世界でしたのでビビりながら進みましたが、中盤に入る前に怖くないのがわかりました。そして中盤途中からのシュールな演出にキョトン。
怖がらせようと思えばビックリフラッシュのような手法を使えば簡単に怖がらせられたと思いますが、開発者はそんなことがしたいわけではないのがわかる。凡人には理解できないほどの前衛芸術のような表現、その中に込められたもの、これこそがこのゲームの本質なんじゃないかと思います。多分。
メタスコアが面白い。平均63点(31件)ですが、90点から10点まで幅広いので平均に意味はない。10点というのは酔ってゲームにならなかった人みたいです。ダークでシュールな世界にハマれば90点という感じ。
「最も評価の割れたサバイバルホラゲーム」としてギネス記録になった『レッドシーズプロファイル』がありましたが、『ヒア・ゼイ・ライ -眠りし者たち-』も評価が割れやすいかと思う。万人受けを狙っていない媚びない独創性があります。
1周して「なるほど、まったくわからん」という感想。2周したい気持ちになる魅力はありますが、酔いの恐怖が邪魔をする。
これは体験版を出す必要があると思いました。私は少し気持ち悪くなりつつも最後まで遊べましたが、酔いやすい人はゲームにならないでしょうし、無理しても体調を悪くするだけになると思う。このゲームに限らずですが、VRのゲームには酔いの問題がありますので、体験版を必須にするくらいじゃないと、酔いの不安から手を出しにくくなると思う。