映像+音+触感、三位一体で次世代の体験を生み出す

PS5

PS5版『DIRT 5』『MXGP 2020』『WRC 9』をプレイして、映像+音+触感の三位一体の凄さがわかった。

映像+音+触感

『DIRT 5』の感想で「もしかしたら普通の振動かもしれないところでも、アダプティブトリガーと音が錯覚を引き起こさせて『その触感』だと感じてしまう効果がある気がする。これは他のゲームでも感じた事です。グラフィックも含めて、連動させて錯覚させるのが重要だと思いました。」と書いていましたが、『WRC 9』をプレイして、この錯覚を引き起こさせる効果こそが、触感の大きな力だと確信しました。

『WRC 9』の場合、単体で見ると映像70%・音80%・振動50%くらいの力かもしれない。しかし、これらを同時に体験する事で、それぞれに錯覚が生まれて映像80%・音90%・振動70%くらいに感じる。

従来の映像と音にも錯覚の関係はあり、音だけを聞いた場合にわかりにくい音でも、映像と合わせて聞くと「これの音なんだ」と認識し、その音らしく聞こえる。映像と音を合わせる事により、それぞれが「それっぽく」感じる。

PS5では、映像と音に触感という第3の要素を加えて、今までになかった錯覚効果を生み出した。単に触感だけを見て良い悪いではなく、映像と音を「それっぽく」感じさせる力も重要だという事。
例えば『WRC 9』では、土に混じった砂利を後輪で弾き飛ばすような触感がある。音だけで聞いても砂利を飛ばしているのはわかりますが、その触感を感じながら聞く音は、より本物っぽく感じる。手元の触感と音は連動していて、お互いの本物っぽさを増し合っている。

今までレースゲームを車内視点でプレイする事はほとんどありませんでしたが、『DIRT 5』と『WRC 9』では、映像+音+触感が素晴らしく、車内視点から抜けられない。TV画面を見て、ヘッドフォンをつけて、コントローラーでプレイしているのに、自分の背後で後輪が滑っている感覚がある。映像は「車内にいるぞ」という映像で、音も「後ろで滑っている音が聞こえているぞ」という音で、何故か手元のコントローラーも後輪が滑っている感じの触感で、この3要素の錯覚で自分の背後で後輪が滑っている感覚がある。

『WRC 9』は、かなり難しいゲームだけど、デュアルセンスでのドライビングが楽しい。冷静に見ると、グラフィックに関してはPS5にしてはイマイチなんじゃないかと思う。でもそこはまったく不満に思えなくて、車内視点でのドライビング体験で満足させてくれる。1つの要素で判断するものではなく、映像+音+触感という三位一体での体験として優れている。

アップデートVer1.1がきた『サイバーパンク2077』をプレイした時に、車で後輪を滑らせても触感がなく、なんだかゲームの映像が遠く感じた。銃を撃つ時もトリガーがスルッとしていて、『Hitman 3』や『ボーダーランズ3』で感じたトリガーに指をかけてからグッと引く感覚もない。触感のないゲームプレイに物足りなさを覚え始めている。

結論

映像と音の解像度だけを上げて本物っぽくするのではなく、触覚を加えた錯覚効果で映像も音も本物っぽく感じさせる手法。SIEがそこまで計算して触感を実装したなら天晴。

今回は触感の話ですが、Tempest 3Dオーディオ技術だけで見ても強いんですけどね。『MAIDEN』で感じた、目を瞑っていても脳内に世界が描かれるような3Dオーディオ。そこに映像と触感を足せば、本物のような錯覚を生み出しやすい。

音から自動で振動を生み出す

Sony Japan | テクノロジー | Stories | ハプティクス
↑の記事で「ゲームの効果音からほぼ自動で振動パターンが生成される自動生成手法も実現しました。」と書いてあります。

その例として『Hitman 3』は「自動小銃はすべての反動をシミュレートし、各武器のサウンドプロファイルに関連した独自の触覚フィードバックを実装。各武器の発射音を再現するのと同じように、銃撃したときの感覚をエミュレートしている」とのこと。
私は最初に『Hitman 3』の記事を読んで、「なんで触感がサウンドプロファイルに関連しているのだろう?」と思っていたのですが、Sony Japanの記事を読んで納得。サウンドから自動で振動パターンを生成しているんだとわかった。
『ボーダーランズ3』の大量の銃に対応しているのも、これのおかげだとわかる。

高品質な触感が自動で生み出される

PS5発売前、私は触感に否定的な面がありました。

「そんなに期待もしていないのが正直なところ。Switchの時に最初はやたらとHD振動が注目されていましたし、Steamではそれ以上前からHDハプティクスに対応していましたが、実際のところ定着していると言えるほど使われていないんじゃないでしょうか。VITAの背面タッチなんかもそうですが、ローンチでは注目されて一発ネタとしての効果はあるけど、そこまで定着しないというか。こういうのは記事のネタとしていじりやすかったり、SNSでネタになりやすいけど、そこまで重要じゃない気もします。」

「とても楽しみで触るのが待ち遠しいですが、ローンチではそこそこ注目されて、しばらくすると廃れる可能性も高いと思っています。定着するかどうかが最大の注目ポイント。もしXbox Series Xにも同等の機能があれば、マルチタイトルで対応して定着する可能性はあると思う。デュアルショック4のスライド機能にしてもそうですが、マルチタイトルが主流になっているので、コントローラーの独自機能には対応されにくい印象です。」

蓋を開けてみれば、触感対応が当たり前。特に車の運転と銃は、かなり高品質な触感が自動生成されている気がします。どのゲームも使い方が洗練されている。これは各メーカーが個々に作り上げたんじゃなくて、自動生成で上手くできるようになっているなと。

SIEも私が思っていたような懸念は持っていたようで、それを解決するための自動生成システムを実装していたんだと思います。既存のサウンドプロファイルに関連づけるだけなら、メーカーは今後もやるでしょう。
PS5発売前に思っていた「しばらくすると廃れる可能性も高いと思っています」という懸念は消えた。

別問題として、リアリティかゲーム的な手軽さをとるかの選択はある。弓矢におけるR2の圧は弦を引いている感覚がリアルで良いですが、指も疲れる。これは現実で考えても同じで、弓の弦を引くのに力を入れなくてもいいのなら、腕がプルプルすることもなく楽に連射できる。リアルじゃないほうが楽です。リアリティを重視するか、ゲームとしての手軽さをとるかの好みは分かれると思う。
私は競技的なゲームはあまりプレイしないので、リアリティというか体験としての面白さ重視。

定着しそうな良い使い方は?

前述した車両の運転と銃は、今後も安定して使われると思う。両方が活用されそうな『グランド・セフト・オートV』が楽しみになってきた。
特に車の運転は、映像+音+触感の錯覚効果の面で非常に有利。運転中、常に触感がありますからね。

銃と似ていますが弓矢も安定している。『デモンズソウル』『Warframe』で多用しました。

『ASTRO’s PLAYROOM』の風、雨、氷の表現も良かったです。他のゲームでも使えそう。

剣戟や打撃のゲームでは、やや生かしきれていない印象。従来の振動が打撃そのものっぽくもあるので違いを感じさせにくい。車のアクセルや銃のトリガーのようなわかりやすい使い方との差もある。

今のところ『ASTRO’s PLAYROOM』と『WRC 9』が触感フィードバック&アダプティブトリガーの2トップという印象。まだまだPS5ゲームが少ないので、これからも新たな驚きを感じさせてくれるゲームの登場に期待します。

三位一体の相乗効果の凄さと、PS5発売前に思っていた触感への懸念が払拭されたという話でした。

タイトルとURLをコピーしました