『The Last of Us Part II』クリア後の感想

ゲームの概要・感想

2020年6月20日に発売した『The Last of Us Part II』の感想。

隙のない洗練されたゲームプレイ

ゲームデザインとレベルデザインが素晴らしくて隙がない。『アンチャーテッド』と『The Last of Us』らの経験があり、スタイルを大きく変えない中で成長してきたNaughty Dogだからこその究極的なものを感じた。

ストーリーの語り方・バトル・探索のバランスが素晴らしい。これらが等間隔という意味ではなく、かなりムラがあるのですが、そこが上手い。
戦闘なしでひたすら進む時間でドキドキさせて緊張感を高めてから戦闘。こういうTPSだと戦闘させがちになりますが、本作では抑えが効いている。圧倒的グラフィックと細かな作り込みで「浸りたい」と思える舞台があるからこそ、戦闘なしで進んでいるだけでも緊張感と臨場感を持って没入できる。
逆に戦闘が続く場面もありますし、プレイヤーに次の展開を予想させない変幻自在なテクニックを感じる。
戦闘がまったくないチャプターもチラホラありますので、アクションをしたい人にはもどかしいかとも思う。

探索は前作から大きな変化があったと感じます。ステージクリア式のようなリニアなゲームなのは変わらずですが、寄り道の幅が広がりました。行かなくても良い場所が多く、寄り道すれば物資やサプリメントや部品らが得られますし、稀に武器やホルダーやサバイバルガイドなどの貴重品も入手できる。物資は満タンの時もありますが、サプリメントや部品はいくらでも欲しいので探索の欲求は尽きなかった。
好みが分かれるところでもあるかと思う。リニアにストーリーを追いたい人にとってはテンポが悪くなって面倒にもなるでしょう。個人的には探索して強化するのが大好きなので、かなり良かったです。メインストーリーと関係ない場所でも特別な会話があったり、同行者のモーションも細かく作ってあったり、ロケーションもコピペじゃなくて訪れたくなる魅力があるし、メインとサイドの垣根を感じないような作り方でもありました。

『アンチャーテッド』っぽいアクションシーンが数シーンあったのも印象的。反面、サバイバルホラーっぽさは少し薄れた印象もある。プレイヤーが前作で感染者に慣れたという部分も大きいでしょうけどね。前作の初見ではクリッカーが怖かったですけど、攻略しちゃうとたいした相手じゃないので怖くもなくなったり。

大幅に楽しくなったステルスと戦闘

わりと広くて隠れ場所が多いエリアで敵の集団と戦闘する場面が多く、戦闘の自由度が大幅に上がった印象です。広く自由に動きやすく、どの方向から攻めてどの敵から倒していくかという選択の幅が広くなった。逃げやすくもあり、銃やアイテムもいろいろ試しやすくなった。『METAL GEAR SOLID V』の自由潜入に似たものも感じる。

敵AIの人間らしさも強化されている。これは『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』の経験が生きていると感じました。リアルにしすぎると面倒くさくなりますが、人間らしい動きをしつつも、ゲームらしい隙もある見事な調整。
敵同士の会話も細かく作っており、隠れて待っている時も退屈させない。敵にも名前があり、殺されると仲間がその名前を呼ぶ。

戦闘の自由度が広がり、敵AIの人間らしさが強化されたことで、かくれんぼと鬼ごっこの楽しさが飛躍的に増した。前作からの進化の中で、この点が一番嬉しかったところ。

f:id:Hamasukei:20200620202217j:plain

回避アクションと急所攻撃

L1で回避ができるようになりました。タイミングも易しめで、敵のモーションを見て感覚的にL1で回避できる。回避からの反撃も気持ち良い。

レンガを投げたりして怯んだ敵はで急所攻撃。キャラクターによってはスキルで急所攻撃を連続して使えたりもする。

回避アクションと急所攻撃により、接近戦の爽快感が大幅に増した。プレイヤーに有利すぎるくらいですが、気持ち良く戦えます。

現世代最高のグラフィック

グラフィックの良さは言うまでもないという感じですが、文句なく現世代では最高峰。新たな景色を見るたびに感激でき、この美しい世界を歩けるという喜びもあり、見て回りたい世界が広がっている。
ちょっと通り過ぎるだけの場所も細かく作っており、贅沢すぎてもったいなく感じるほど。

敵の表情やモーションも人間らしくて良いので、戦闘中にフォトモードで撮影すると良い絵が撮れます。

リトライが早い

起動時以外はほとんどロード待ちを感じさせないような作りになっています。こういう作り方は珍しくないのですが、本作では死亡時のリトライの早さに驚いた。シームレスを意識しているゲームでも、死亡時のリトライは30秒くらい待ったりしますからね。

自由な難易度

難易度はEASY~SURVIVORまで5種類。
ゲームプレイ中にいつでも変更可能で、難易度によるトロフィーへの影響もない。しかもカスタム可能。プレイヤーの強さ、敵の強さ、仲間の強さ、隠れやすさ、資源の量の5項目を個別に難易度設定可能。

現代的な仕様であり、真の意味で自由な難易度を提供しています。

フォトモードとNew Game+があってバグはなかった

発売日時点でフォトモードとNew Game+がありました。これらがアップデートで追加されるゲームが多い中、発売日時点で実装しているのは嬉しい。

1周した中でバグは1つもなかった。

拡張機能とかアクセシビリティも他のゲームより細かくて、アップデートで追加されるようなレベルのものが最初からある。「作り込み」がこういう部分まで届いています。

120点の技法だけど前作には及ばないストーリー

ストーリーを描く技法的には従来基準の100点を超えてますから120点。過去のどのゲームよりも豪華で凝っていて、ストーリーと人間ドラマが深く描かれている。群像劇であり、各キャラクターの過去までもプレイアブルで語る。それだけのために使うロケーションも贅沢に用意されており、もはやAAA級という枠を超えています。過去に見たことがないというレベル。

怒涛の展開で先が気になったストーリー

序盤は単調な復讐劇になるのかと思っていましたが、中盤から終盤に入るあたりでガラッと変化が加わり、そこからの展開が気になって引き込まれました。群像劇で複数勢力ならではの個々の事情が見えて、単純ではない展開で先が読めなくて面白い。別視点でストーリーの見え方と印象が変わるのは『ニーア レプリカント』を彷彿とさせるところもありました。展開自体は怒涛の展開でもあり、衝撃を与えてくれる。

わかりにくいけどキレイにピリオドを打ったストーリー

クリア後にストーリーを見直して「愛」「復讐」「許し」などのテーマを見事に収束させてピリオドが打てているんだなと気付いて「Sugeee!(すげぇ)」と思えましたが、初見だと気付きにくいストーリーテリングの構造だったように思います。

前作のラストの件でジョエルとエリーの関係は複雑です。その複雑さをプレイヤーにも味わわせるような構造になっています。エリーじゃない側のキャラクターを鏡のように使い、そこにエリーやジョエルの姿を映し、プレイヤーにも同じような感覚を与える。プレイヤーはエリーやジョエルが好きですから味方をするので、2人の悪事に対しても憎しみを抱きにくいから暴力も罪も軽く見える。だから客観的に見られる鏡を用意したんだと思います。プレイヤーがエリーじゃない側のキャラクターに感じる怒りは、ゲーム世界の中でジョエルにも向けられているもの。この鏡を使って、本作の最大のテーマを収束させました。
ゲームならではの手法で、よくこんなやり方を思いついたもんだと感心するほどです。

が、実際のところ狙い通りとは言え居心地の悪さもリアルに伝わり、ゲームとしての楽しさを損ねる部分もあると思う。そのうえ、最終的に「愛」「復讐」「許し」が収束したことがプレイヤーに伝わらない可能性も高い。下手したら「復讐なんてアイツは望んでいない」「復讐に疲れた」という感じの安っぽいものと見られる。
エンディングの回想シーンにヒントがあり、ラストバトルでエリーがとった行動の意味がわかるような気がしますが、これはラストバトルの前に見せてほしかったと思った。まぁ、ゲーム全体において答えを後で見せるスタイルだった感じでしたが。
この最後の収束のためにゲーム全体に大掛かりな仕掛けを作り、居心地の悪いプレイ時間が長くなってしまうのはマイナス面のほうが大きそう。具体的なマイナス面として、キャラクターの多くを好きになれないこと。私はエリーも嫌いになり、嫌いな主人公を操作するのはちょっとストレスです。
クリエイティブ・ディレクターのニール・ドラックマンがインタビューで「物語が向かう先、描かれるテーマ、愛するキャラクターたちの結末を好きになれない人もいると思う。“普通だった“と言われるのであれば、むしろ全力で嫌って欲しいですね」と言っており、嫌われるのは承知の上だったようです。

でも最終的に理解すると、本作のテーマが表向きは「復讐」っぽいものになったのも納得です。先にテーマを考えてストーリーを作ったかと思いますが、本当のテーマは復讐じゃないと思います。ちゃんと前作がベースになっており、前作で残った大きな問題がテーマなんだと感じた。
本当のところはシナリオライターしかわかりませんけどね。私は納得した。

仕掛けの面白さはありますが、ストーリーとキャラクターに前作ほどの良さはないと感じました。テーマに縛られ過ぎた感があります。テーマに沿っていて構成も素晴らしいのですが、そのテーマと構成が不愉快に感じやすい部分を多く生み出すもので、大ヒットビデオゲームの続編として大衆受けはしにくい。ニール・ドラックマンが言う「全力で嫌って欲しい」の言葉通り、嫌う人も多いかと思う。

ゲームプレイは良くなりストーリーはパワーダウン

  • かくれんぼと鬼ごっこを存分に楽しめるステルス、回避と急所攻撃で爽快感が増した戦闘、これらによってアプローチの幅が広がり、自由度が高くなったステルス&戦闘が最後まで最高に楽しめた。
  • ストーリーの語り方、探索、戦闘のバランスに熟練したNaughty Dogだからこそのものを感じた。このジャンルではライバルが見えない。
  • プレイしたゲームの中で最高峰のグラフィック。既に次世代感があり、PS5のグラフィックの感動を奪っちゃうんじゃないかという不安すら感じた。
  • ロード待ちがあまりなく、リトライも早い。
  • 海外ドラマの2シーズン分ぐらいの壮大なストーリー。豪華なロケーションを多数用意して複数のキャラクターや過去をプレイアブルで見せる。

メタスコアの半分以上が100点満点というのも納得で、これを100点にしておかないと、他のゲームに90点以上がつけられなくなる。それぐらい過去のゲームとは差がある。
洗練されすぎて良さに気付けないところもあるんじゃないかなぁと思います。悪い部分はすぐ気になりますが、洗練された部分はゲームプレイに自然に溶け込んでいるので気付きにくくもある。グラフィックや細かな部分の作り込みも、Naughty Dogだから当たり前に提供してくれている感じにもなる。

ストーリー展開は先が気になって引き込まれて良かったですし、1つの大きなテーマに対してしっかりピリオドも打てていますが、キャラクターは好きになれなかった。難しいキャラクター作りに挑戦したようですけど、やや失敗しているように感じた。テーマに縛られ過ぎて、キャラクターが自由に動けなかった感じ。

ゲームプレイの部分において『The Last of Us』をスケールアップしており、その方向性も自分好みでもあったので、続編が出てくれて良かったと思う。2020年のGOTY獲得数でトップになる可能性は高いでしょう。素晴らしかった!
ストーリーとキャラクターにおいては前作のまま終わらせておいたほうが良かったと思えたのが正直なところ。映画や海外ドラマでもよくあることですけどね。大好評を得た作品の続編は難しい。
Naughty Dogの次回作は『The Last of Us Part II』のゲームプレイをさらに進化させた新規IPをPS5で出してほしい。

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: Video Game

コメント

  1. ろく より:

    FF15もそうでしたが、細かい演出やシナリオのスジ、キャラクターが発する言葉の間を感じられる、読解力と理解力のある人じゃないとこういう作品は楽しめないでしょう。
    でもこれは仕方がないと思います。ただ、この作品はそれを「あえて」やっている気がします。「上っ面なキャラクターの愛憎や、ステレオタイプの演出だけで物事を判断するバカはこの作品を受け入れないだろう、それで良い」という意思があるんじゃないでしょうか。色んな意味での挑戦的作品になっているのが素晴らしいと思うんですね

  2. こんにちは より:

    私は今作のストーリーは自立だと思いました。なんだかんだでジョエルに甘えてたエリーが最後の最後でジョエルから離れ独り立ちしていく。そんなエンディングに感じました。批判も多い今作ですがエンディングまでプレイしないと評価できない作品です。今はファンが感情的になっているような雰囲気ですが、数年の冷静さを取り戻す期間の後に再評価される気がします。

  3. チェックするよっ より:

    エリーは無印の時点でそっちの気はあったし
    アンチャ2,4でもプロローグの時点でセクシャルな表現はあった
    主人公は成長したって部分では別に気にはならなかったかな
    寧ろ、ゴア表現規制のほうが気になるかな
    まだクリアはしてないけど、プレイアブルの時点で腸を割かれた遺体とかあったんで

  4. 名無し より:

    凄い上手い批評ですね。
    ちょっと感動しちゃいました。
    傑作には間違いないので、いろいろな人に触ってほしいですね。

  5. ABEL より:

    あなたの批評は上手すぎるわ。
    すぐ買うつもりはなかったけど、あなたのブログでやりたくなる(^_^;

  6. garbagememo より:

    「あ」さん、比喩にしても問題ありすぎでしょう。
    言いたいことを比喩ですべて台無しにしていませんか。

  7. より:

    LGBT要素をここまでぶちこむ必要が果たしてあったのか?
    蛆虫は嫌いだが、わざわざ蛆虫のいそうな場所に行って駆除しようとは思わない。しかし蛆虫が自分の目につくところにいたら嫌悪感を示すし出ていけよと思うのだが。

タイトルとURLをコピーしました