ようやく次世代機の発表で興奮できた!
5月14日 0:00から『Summer Game Fest SGF Special Event』が開催され、Unreal Engine 5のPlayStation 5向けデモが公開されました。最初は「エンジンじゃなくてゲームが見たい」という気持ちだったのですが、数分で大興奮。ゲームの素晴らしい未来を感じさせる内容になっていました。
Youtubeの字幕機能に対応していますので、字幕は表示するべきです。できれば大画面の4Kで視聴したほうが良いです。滅多に見られない素晴らしい動画ですから、少しでも良い環境で視聴しないともったいない。
リアルタイムグラフィック技術を進歩させる2つのポイント
- 動的グローバルイルミネーション
美しいバウンス ライティングを即座に得ることができます
ゲーム制作において、ワールドを静的にするという制限に縛られることはありません
そしてイテレーション速度が大幅に向上します
この新しいシステムに名前をつけました、Lumenです - 完全に仮想化されたジオメトリ
アーティストはもうポリゴン数もドローコール数もメモリも心配しなくてよいのです
映画品質のアセットを直接エンジンに持ち込んで、そのまま使用することができます
自分の作ったZBrushモデルもフォトグラメトリスキャンもCADデータもLOD作成もパフォーマンスを出すための最適化と品質低下なしにインポートすることができるようになります。つまりアート アセットがそのまま機能するようになります
この新しい技術にも名前をつけました、Naniteです
まず大興奮したポイントとして、オープニングで上記のような解説があり「映画品質のアセットを直接エンジンに持ち込んで、そのまま使用することができます」とか夢物語のようなスゴイことを言われた直後に「PlaySation5でのライブ実行です」と言って実際に動くところを見せたところ。
見せ方も最高で、まるでゲームを実際にプレイしながらのような形で解説してくれる。「こういうゲームが動く」というのがわかりやすい。ゲームプレイしながらだから現実性があって良かった。ムービーっぽいものだったら、さほど感激しなかったと思います。
冒頭でいきなり「ゲーム向けバージョンのアセットではなく、通常は映画のみで利用される映画品質版のアセットを使用しています」「各アセットには百万程度の三角ポリゴンがあります」「仮想化テクスチャにより、8K解像度のテクスチャを使用しています」というトンデモないことをサラッと言う。言われているように実写映画の背景のようなCG。これが「PlaySation5でのライブ実行です」という事実に興奮せざるを得ない。
「Naniteは驚異的な数の三角ポリゴンを高速にレンダリングします。各フレームのソースジオメトリのポリゴン数合計は10億を超えます。Naniteはこのソースを劣化なしに2000万の描画ポリゴンへと変えます」テキストだけを見るとハッタリにしか思えないようなことをプレイ動画を見せながら解説されちゃう衝撃。10億を超えるソース元のポリゴンを劣化なしに2000万の描画ポリゴンに変えるとか、「ぼくが考えた最強のレンダリング」みたいな話。
ライティングも動的だと言い、実際に光を動かして見せる。
キャラクターが歩くとゴゴゴゴという地鳴りで壁が崩れる。ここでオーディオ機能の解説。「Convolution Reverbによって実際の空間から計測したリバーブ特性を仮想空間で再現できます。ここでは実際の洞窟からサンプリングしました。サウンドフィールド レンダリングによって空間化されたオーディオを録音し、再生することができます」とのこと。
コウモリの群れがバサバサと飛ぶところや、水の表現技術も解説。さらには落石の剛体シミュレーションや布のシミュレーションもしているという。これら全てが実際にゲームプレイを見せながらの解説なので感激する。PlayStationのボタン表示が出るのも良いです。
キャラクターの動きが不自然にならないようにアニメーションシステムも大幅に改善したという。「予測に基づく足配置とモーションワープを追加しています。自然に見えるようにIKや身体姿勢を動的に調整します。」と壁移動を解説。こう言われると、本物の岩壁を人間が登っているリアルな動きに見える。ゲームっぽいごまかしがない感じ。
「キャラクターと環境が現実的なインタラクションを行うように、シームレスなコンテキストベースのアニメーションイベントをトリガーできるようになりました。ドアに対する手がその例です」とも。
洞窟内で光源を操作するところを見せる。金属の反射だったり、虫の反応。
石像に近づくと「この像はZBrushから直接インポートされました。三角ポリゴン数は3300万を超えています。法線マップのベイクはしていません。LODも作成していません」と1つの像の凄さを語った直後に「この部屋では同じ像が500個近くあります。詳細レベルは先程と同じです。像だけでも合計すると160億個の三角ポリゴンになります」と。さらに「このデモ全体では数千億の三角ポリゴンがあります」という。
そして最後の驚きポイント。遠くの風景まで見せて、数千億の三角ポリゴンがある世界を高速移動。SIEが1年前にレンダリング速度の向上をアピールする『スパイダーマン』のデモを見せましたが、あれはあくまでPS4レベルの世界でした。今回は映画品質版のアセットの世界だからスゴイ。
「次世代機のグラフィックスへの期待値を下げておくべき」という前フリ
以前、IGNの「次世代機のグラフィックスへの期待値を下げておくべきなのかもしれない」という記事を紹介し、納得できるところがありました。しかし、それが前フリだったかのように次世代機のグラフィックスの凄さを見せてくれたUE5のデモ。もう期待することに遠慮する必要はないと思わせてくれた。
見せ方と解説の上手さもありますね。言っても実機を見たわけではなく、劣化したYoutubeの動画を見ただけですからね。ちゃんと解説して凄さを感じさせてくれた。と言うか、PS5でのライブとして見せてくれなかったらハッタリとしか思えないことばかり言っているという現実離れした凄さでした。早く本物を見たい。
ハイエンドPCよりも優れているストレージシステム
PS5の超高速SSDに関して事前に調べておいたので理解しやすい部分があった。「メモリも心配しなくてよいのです」や「驚異的な数の三角ポリゴンを高速にレンダリングします」は、PS5の新しいメモリ管理と超高速SSDが生きている感じ。
いろいろ記事を読んでPS5の超高速SSDの凄さを知る – PS4ちゃんねる Pro
グラフィックの凄さもあるけど、ゲーム作りが簡単になっていそうだなというところも感じました。面白いゲームを作るうえでは、これがかなり重要かと思います。今までは必要だった面倒な作業も「アレをしなくていい」「コレもしなくていい」と省ける様子でした。こういう話は既に開発者のTwitterでありましたし、その答え合わせができた感じでもある。
グラフィックが凄くなっても、クリエイターの手間を強いるならハリボテのようなゲームになるだけですからね。そういう部分も重要視しているなと思いました。
Geoff Keighley氏のインタビューでEpic GamesのCEOであるTim Sweeney氏は、
「Sony’s storage system is absolutely world-class,” Sweeney says. (ソニーのストレージシステムは絶対的にワールドクラスです)」
「Not only the best-in-class on console, but the best on any platform. Better than high-end PC. (“コンソールだけでなく、どのプラットフォームでも最高です。ハイエンドPCよりも優れている)」
と語っており、PS5のストレージシステムが最高であると語っている。
“The world of loading screens is over,” says Epic Games boss Tim Sweeney – VG247
今までの感覚なら家庭用ゲーム機でこれぐらいならPCはもっと凄いと思っちゃうところですが、UE5の凄さがストレージシステムの性能に起因するものなら、現状のPCでは難しい部分も出てきてしまう。
これはマーク・サーニー氏が語っていた「FLOPSはGPUの様々な機能のうち、浮動小数点演算というただひとつの能力だけを測る指標であって、現代ではすでに意味が薄く、目安にするのは危険。CUの数よりもクロックが高いほうが、GPUが備えるその他の機能を高いサイクルで回せるため実効上は優れている」の答え合わせかもしれない。
Naniteは、映画品質の何億というポリゴンで構成されたアセットをそのままゲームで使える。ゲームで実行される時は自動で品質劣化もなく2000万の描画ポリゴンへと変える。例えばこのアセットに近づいたり離れたりする時に、超高速SSDの速さが生きる。Naniteの機能自体は他のプラットフォームでもサポートされるが、実行される時の質は超高速SSDを持つPS5が優位になる。現状はPS5が一番速いと明言されていますので、その他のプラットフォームだと処理が遅れる可能性が高い。
PS5に関する初期の発表で『スパイダーマン』を使っての高速レンダリングを見せていましたが、それがこういう形でも活用されていると。
最高の動画発表
PS5のゲーム一覧とオンラインイベントの難しさという記事で、「今のところインパクト不足」「オンライン発表の難しさを改めて感じた」「メーカーから預かったゲーム映像とコメントを垂れ流すだけ」「ゲームプレイを入れるべき」「もう世界観ムービーだけはやめてほしい」「ゲームなのにゲームプレイを重視しない紹介は歪んでいる」と不満が溜まりまくっていたわけですが、それをぶっ壊してくれたUE5のデモ。
あの記事の中で『Horizon Zero Dawn』の初報を良い例だと紹介しましたが、UE5も同じような良さを持っていた。長めの時間でゲームプレイを見せながらの丁寧な紹介。『Horizon Zero Dawn』では魅せるゲームプレイで語ってくれましたが、UE5のデモではゲームプレイしながら開発者がポイントを言葉で語ってくれた。どちらも「伝えたいことを伝える」がしっかりしていました。技術も凄いけど、見せ方も時代の流れを読めていますね。Youtubeの画質劣化の問題もありますから、ふんわりしたムービーだと弱いし、イメージムービーだとどんなにキレイに作っても今の視聴者には響きにくいです。「実機で動かす」というところが大事。
『Horizon Zero Dawn』もUE5も本当に凄いからこそ、ごまかす必要がなく凄いところを見せられたんでしょうけどね。
ただ、UE5は2021年みたいですので、しばらくこの凄さはお預けになると思います。一応、UE4.25でも次世代機能の一部は含まれているようですが、最高級の品質を得るには少し待つ必要がありそう。
なんにせよ、ようやく次世代機ならではの凄さを映像で見ることができました。今回のデモはPS5上でそのまま動くプレイアブルのものらしい。Youtubeの動画も高評価が4.5万に対し、低評価は500。圧倒的高評価率で世界中のゲーマーが興奮しているのが伝わる。
UE5のPS5デモを発表するにあたり、SIEがどこまで関わっているのかは不明ですが、結果としては上手いタイミングでのPS5の仕掛けになったと思います。刺激に飢えている時にインパクトのある内容をくれた。次は発売日が近いゲームで興奮したい。