2019年11月13日にリリースされた『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』の感想。プラチナトロフィー獲得までプレイしました。
操作方法
デュアルショック4とMove2本持ちに対応しています。
プレイヤーは椅子に拘束されていて、カティアという少女に指示を出してパズルを解いて進めるゲームです。
驚くほどシンプルな操作。使用ボタンは1ボタンのみで、デュアルショック4なら×(〇でも可)、MoveならMのみ。このボタンを押すとレーザーポインターが出ますので、カティアに調べてほしい場所を指定する。
カティアが対象を指差して確認を求めている時は、プレイヤー自身がうなずく事で行動に移ります。首を横に振ればキャンセル。
残酷で悲痛
トライアル&エラーのパズルゲームですが、大きな特徴は残酷さ。パズルに失敗すると、カティアが押し潰されたり虫に食われたり電気ビリビリで殺されたりする。ダンガンロンパの処刑みたいですが、非VRのゲームとは比較にならないほどVRでこれを見るのは辛い。目の前で少女が残酷な殺され方をするのはトラウマになりかねん。このゲームはCERO:Dですが、CERO:Zのどのゲームよりもえぐいと感じた。今の時代の倫理的にこれはアリなのかなと思うほどであり、苦手な人はプレイを続けられないと思う。かわいそうすぎます。
死亡シーンだけじゃなく、怯えている姿もめちゃくちゃ心に響いちゃうんですよ。いたたまれなくて逃げたくなるほど。ゲームでここまで思わせるのは尋常じゃない。
でもこれがあるからパズルを解く緊張感が最高になる。トライアル&エラーのパズルゲームなんですけど気軽にトライアルなんてできません。本当に少女の命をかけた脱出ゲームという感覚を味わえる。失敗したら死、というこの緊張感は『ソウ(SAW)』みたいな脱出ゲームとして最高峰。ビデオゲームでここまでの物は他にないんじゃないでしょうか。プレイヤーの死だけだったら、もう少し気楽に遊べたでしょうから、カティアの犠牲に大きな意味があると感じる。
カティアだけじゃなくて椅子に拘束されている自分も死にますけどね。初期にあったカプコンの『kitchen』みたいに、VRでの残虐な殺され体験。痛みを錯覚するような怖さがあり、注射される時なんかは目をつむっちゃいました。
VRアトラクションっぽさもあり、こういうわかりやすいVR体験が入れられている。怖いんですけど楽しいVR体験でもある。
ホラーっぽさもあるんだけど安易なジャンプスケア系(ビックリフラッシュ系)ではないので良かったです。
歯応えのあるパズル
パズルの内容は比較的オーソドックス。重りを調整したり、光や電車が通る道を作ったり、パネルの模様を消したり。わりとよくある感じだとは思う。
パズルの難易度はやや高いと感じた。それでも打てる手が多くはないので、いろいろいじっていればそのうち打開できる難易度。カティアの死に心は削られていきますけどね。やや高めの難易度とカティアの死があるからこそ、パズルが解けた時は本当に最高。パズルを解く楽しさと喜びが普通のパズルゲームよりも大きい。パズルゲームの面白さは解けた時の快感も大きいですが、それをVRによって増幅させる事に成功している。生身の人間の存在や命を感じやすいVRだからこそ、命をかけた脱出ゲームが体験できる。
一部のパズルでは、まず仕掛けを一通り組み上げてから起動ボタンを押すシステム。これの演出がめちゃくちゃ良くて、起動させるとカティアがピンチに陥る。捕まったり壁が迫ってきたり。『アンチャーテッド』か『インディジョーンズ』のようなハラハラする展開で死にそうになって「これは失敗したか?」と焦らされてから見事に脱出したり、本当に失敗していて死ぬ時もある。冒険映画のようなハラハラドキドキの展開でパズルの結果が見られるのは面白い。
テンポは悪い
ゲーム的な事を言うとテンポは悪いです。コミュニケーションゲームというか、カティアを操作するんじゃなくてコミュニケーションをとって協力してもらうという意識。オブジェクト1つを調べるにも、非常にゆっくりとした動作です。コントローラーでキャラクターを操作するゲームのようにはテンポ良く進められない。
これの辛いところはパズルを失敗してやり直す時ですね。トライアル&エラーで何度も仕掛けを組み直すのはダルくなってきます。まぁそんな時でも一生懸命やっている少女をせかしてはいけない。そんな意識でプレイするべきゲーム。
結局はカティアという存在にどれだけ命を感じられるかが重要になってくるのかなと思う。『人喰いの大鷲トリコ』っぽさも感じる。
抽象的なストーリー
ループものであり、現実感のない世界での脱出ゲームです。ストーリーは小道具から何かを感じ取ったり、抽象的なストーリームービーから想像する。なにがどうしてどうなった、というはっきりしたストーリーの見せ方ではないです。
自分なりに大体こんな感じなんだろうなぁという想像のしやすさは感じました。わかりやすい驚きもチラホラあり、特にラストは比喩じゃなくて鳥肌が立ちました。
ストーリーを楽しんだというよりは、想像の楽しさとキャラクターの存在を感じる楽しさ。
最適化されたVR向けのグラフィック
グラフィックは良いです、というかVRゲームとして最適化がバッチリな印象。最初からVRで表現できる事を計算してデザインされている感じで、全体の調和が優れている。VRゲームにありがちな部分的なチープさが見られにくい。チラつきも感じず見やすい。
ロードの演出も上手かった。「now loading」なんて表記は一切なく、部屋の移動中はゲームマスター的視点でモニタリングしている画面になる。VRゲームにおけるロード画面の問題は雰囲気が削がれる事なので、このゲームは雰囲気を感じさせるロード画面だから良いです。
賛否両論な〇〇〇〇〇ょ〇〇
このゲームは〇〇〇〇〇ょ〇〇がかなり重要な場面で出てきますが、自分の中で賛否両論。
まずキーアイテムとしては非常に素晴らしい存在。家族の中で定番の遊び道具だったのかなぁと想像させられ、楽しく遊んでいる姿が目に浮かぶんですけど、それを使って悲しすぎる命の奪い合いをする地獄。泣けました。
ただ、これ自体はそんなに面白くない。1回や2回ならいいんですけど、全ストーリーを終えるまでに20回以上はやらないといけないのはさすがに苦痛なレベル。もう少し削ってほしかった。
あとゲームオリジナルのパズルデザインが優れているのに、こういう元々そのゲームに慣れている人が有利になるような物をパズルゲームの重要な部分で用いるのもあまり良くないゲームデザインに思う。洋ゲーでもたまにありますけど、チェスとか推されると嬉しくない。
パズルのやり直しが最大の問題点
パズルと演出とVR体験が融合して素晴らしいVRパズルゲームだった本作。しかしながら、終盤は残念な状態になりました。
終盤はパズルゲームと呼べないような状態になる。ループ物で1+6周くらいすれば全パズルは解き終えます。でもストーリー的には半分も埋まってない。過去に通ったルートの終盤で分岐してストーリーを回収していくのですが、そのルートのパズルを全て解きなおさなければならない。どんなに効率良く回収を進めても最低10回は解いたパズルのやり直しが求められる。はっきり言ってしまえば、1度解いたパズルのやり直しは単純作業でしかなくて、まったく面白味がない。ここではカティアの動きが遅い事がかなり重くのしかかり、ただただ苦痛とストレスの時間で解く快感もない。その先には〇〇〇〇〇ょ〇〇が待っている。
プレイ時間を増やそうとしたのか、失敗な仕様だと思う。解いた部屋は通過できたほうが自然だし、再挑戦したい人には任意でパズルを再起動できるようにしておけば良かったのに。せっかくの素晴らしいゲームが終盤で崩れていくような状況はもったいなさすぎた。パズルを解き進めていた時は密度の濃いゲーム体験だったのに、終盤は文字通り水増しされた薄味の体験に変わってしまった。でもその辛い時間の後にエンディングで癒されましたけどね。
パズルとVR体験のアトラクション
VR専用タイトルとして、ゲームデザインもグラフィックも最適化されている印象。コミュニケーションゲームとして少女のリアクションが多彩ですし、アトラクションとしてハラハラドキドキさせる演出も満載。「こういうVRゲームが作りたかった」という明確なコンセプトを感じます。似たようなゲームも多いですから、作家性の強さみたいなのは嬉しいポイントであり、体験してみて価値を感じる部分でもある。
終盤が作業的になって苦しかったですけど、ラストは曖昧ながらも心が洗われるようにスッキリでき、心に残るVR体験となりました。