2019年11月8日にリリースされた『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』の感想。
操作方法
- 〇 – しゃがむ
- 〇長押し – 休憩
- × – ジャンプ/段差上り(長押し対応)
- △ – 落ちている荷物を背中に積む
- □ – イントラクト/打撃
- L1長押し – コンパスモード
コンパスモード中に△で看板を設置
コンパスモード中に方向キー下を押してBBを見る→□でBBをあやす - R1 – センサー
- R1長押し – 息を止める
- L2 – 左に姿勢制御/武器や道具を構える(装備時)
- R2 – 右に姿勢制御/武器や道具を使用する(装備時)
- L2+R2 – 両足で踏ん張る
- L3 – ダッシュ
- R3 – 視点切替/天気予報(機能追加後にマップ画面で)
- タッチパッド – いいね/コミュニケーション
配達とルート作りと繋がりが楽しい
ゲームプレイの基本となるのは配達。メインミッションもサブミッションも配送端末から依頼を受けて目的地の配送端末に届けると完了。配達を繰り返して新たなエリアに行き、ストーリーも進む。
発売前は「どんなゲームなんだろう?」という謎のゲームでしたが、非常にわかりやすいゲームでした。このシンプルな配達がゲームの主軸にあり、そこに多彩な味付けがされている。
1.徒歩時代
徒歩では荷物の個数と重さと高さが重要で、荷物が重くて高いほど転びやすくなる。地形のシステムが細かく作られており、レーダーを使用した時に青が安全、黄色が注意、赤が危険という具合。黄色や赤では転倒しやすくなるので、L2orR2で左右にバランスをとったり、L2+R2で踏ん張ったりして転倒を回避する。石につまずきそうになったり、足を置く場所を自動で判断したり、地面の状況が細かくサムに反映される。配達がメインのゲームだけあり、地形に対するサムのリアクションは他のゲーム以上のこだわりが感じられる。
最初から使用できる梯子とロープ用パイル。梯子は高いところに上ったり、橋にできる。ロープ用パイルは崖際や急な坂に設置して上り下りできる。これらは自由に設置できるので、自分で山の形状を見極めて登山ルートを考える面白さがあります。
MGSVで自由潜入という言葉がありましたが、デスストでは自由配達といった感じ。最初に「面白い!」と感じた部分が、自分なりに配達ルートを考えて、そこを往復して効率化していったところ。
ストランドシステムによって他のプレイヤーが設置した梯子とロープ用パイルもあります。面白いのは道で、自分と他のプレイヤーがよく歩くルートは獣道のような道になっていきます。草原よりも歩きやすいし、見やすい。この変化は非常に面白かった。ルートを共有して地形が変わる面白さ、それが配達のしやすさに繋がる面白さ。
ゲーム開始から10時間ほどは徒歩がメインになります。梯子とロープ用パイルを駆使して自分なりの配達ルートを作るのが楽しいですが、移動速度は遅いのでけっこう大変。『ワンダと巨像』のような旅っぽさがあり、孤独に荷物を運んで行き、新たな場所に到達すると大きな感動が得られますし、そこを狙ってBGMが流れたりもします。グラフィックの美しさも素晴らしい。徒歩時代は、こういう沁み入るような旅の感動を享受できるかどうかが重要になります。
序盤に長い距離を歩かせるのは作り手も勇気が必要だったと思う。序盤の苦労があるからこそ変化を楽しめたり、ストランドシステムの有難さを感じられたり、地味な配達のロールプレイが楽しめたりするのですが、ゲームの「つかみ」の部分で長距離の徒歩移動を強いるのは中々できない事だと思います。実際、大衆受けするようなキャッチーな遊びではないので、それこそMGSのようなゲームを期待した人には肩透かしな部分になるかと思う。
2.二輪車と四輪車
中部エリアに入ったら車両が活躍します。車両を走りやすくするために大きな橋を架ける必要があり、どこに橋を架けるかも人それぞれ。ストランドシステムで上手いところに橋が架けられていると感心しますし、自分が架けた橋に「いいね」がたくさんついているとドヤ感も得られます。
そして車両にとって最重要なのは国道の復旧。国道復旧装置に素材を投入するだけのシンプルなシステムですが、1人で全ての国道を復旧させるのは大変。これもストランドシステムで協力し合って復旧させる。私が自力で3ヵ所を復旧させている間に他の人が3ヵ所ほど復旧してくれていて非常に助かりました。
車両時代はシンプルにカッ飛ばすのが最高です。徒歩時代の大変さがあるからこそ、車と道路の有難味を感じる。徒歩で苦労して繋げた国道をバイクで初めて走り抜けたあの喜びを忘れない。
3.ジップライン時代
ジップラインは最高の移動手段。上から下だけじゃなくて下から上にも行ける。電車とレールみたいなものです。徒歩だとめちゃくちゃ大変な雪山でも300mごとにジップラインを設置すれば電車で通過するようにアッと言う間。徒歩時代は20分くらいかけて移動していたルートもジップラインで2分ほどに短縮できた。
多数のBTがいる森の上をジップラインで見下ろしながら通過するのは最高。
自分が設置できる建築物には上限がありますが、ストランドシステムによって他者が設置した建築物は自分の上限とは無関係。他者が設置したジップラインを上手く利用して、全ての場所に繋がるジップラインを作れたら究極かと思います。
ストランドシステム
徒歩→車両→ジップラインへの変化をストランドシステムで皆と協力しながら作り上げていくのが非常に面白く、初めてのゲーム体験でした。徒歩は苦しさもあるので、皆で作り上げた道路やジップラインの有難味や達成感が大きい。
ゲームの主軸が配達であり、そのための配達ルート作りとストランドシステムが噛み合っています。
これが敵を倒すゲームならば、他者の協力が余計に感じてしまう事もあると思う。配達ルート作りの場合は、橋もジップラインもいくらでも欲しいと思える。ポイントを突いた建築物には気持ち良く「いいね」します。誰かが架けた橋の先にある川に自分が橋を架けて繋げたり、誰かが設置したジップラインに自分のジップラインを繋げたり、皆で少しずつ手を加えて便利にしていくのが楽しい。自分の世界の建築物は自由に破棄できますし、気を遣う事もまったくない気楽さです。
バランスを崩すこともまったくなく、非同期オンラインなので上手く調整されています。ゲームの進捗に合わせて他者の建築物も反映が調整されている。半年後にゲームを始めても、そこら中にジップラインが設置されている事はないでしょう。徒歩→車両→ジップラインへの発展を皆と協力共有しながら楽しむ事ができるかと思います。
そもそもカイラル通信を繋げていないエリアはストランドシステムが機能しないので、最初は自力でやる必要がある。特に雪山は最初は自力で登ってほしいところですからね。ゲームバランスは完璧です。
配達とルート作りと繋がりが楽しく、初めてのゲーム体験。ここが『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』で一番良かったところですし、配達がメインのゲームで、ここまでハマれる仕掛けを作ったのは驚きです。このイノベーションはGOTYに値する。
非同期オンラインという言葉では安っぽく感じてしまうほどであり、他の人が使ったハシゴや乗り捨てられた車両などの痕跡で確かな繋がりを感じる。自分の設置した橋を誰かが強化してくれていたり、姿は見えないけど存在を感じる。サムとBBとの繋がりのような事がプレイヤー同士にも存在する。
簡単に最高評価
配達を達成すると評価されるんですけど、普通にやっていればほぼ毎回最高評価を得られます。最初は「なんでこんなに甘くしたんだろう?」と疑問だったのですが、配達後にお客さんから褒められるという行為が配達の依存性を増す要素になっていると気付いた。当たり前の仕事をして評価&感謝される喜びがあります。
ストーリーと演出も良かった
ストーリーも非常に楽しめました。最終的には全部説明してくれたので、わかりやすさもありました。あまり濁していないというか、説明が長すぎるくらい細かく説明してくれて好きなタイプでした。ちゃんと細かく設定を作り込んでいるのが伝わります。ドキュメント欄の情報量も凄い。
サム、デッドマン、ハートマン、ダイハードマン、ママー……キャラクターたちがとても個性的で、フォトリアル系のゲームでは他にはないレベルですね。演技もCGとは思えないほど良かった。超長いエンディングでは心が沸いて熱くなる場面もあり、最後までプレイして本当に良かったです。
デッドマンが一番好きになりました。BBもかわいい。
演出は「映画ファンが作ったゲームだなぁ」と感じる場面が多々あります。狙いすぎではありますが、素直に楽しんだ。映画というより海外ドラマですけどね。チャプター分けしてそれぞれのキャラクターにスポットを当てる手法もわかりやすかった。
小出しにされてきたトレーラーの場面をゲームで実際に確認するのも感慨深いものがありました。意味不明だった点が線で繋がる感じ、まさにこれもテーマに沿ったものだったのかなと思います。
配達とルート作りと繋がりが楽しくて交通網を作り込みたい気持ちと、ストーリーの先を見たい気持ちが交錯して悩みました。
ロードが短い
AAA級のオープンワールドにしてはありえないほどロードが短いです。最近はロードの長さが気になるゲームが多くて「PS5でロードが改善されれば良くなりそうだなー」と感じていましたが、『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』はロードがまったく気にならなかったゲーム。
ステルスとホラーのBTエリア
雨が降るとBT(敵)が出現する。BTは通常であれば見えない存在。オドラデク(探知機)の向きとパタパタの速さでBTの方向と距離を知る事ができ、こちらが停止している時はBTの姿が見えるが、移動を始めると見えないのでオドラデクが頼り。BTからもこちらは見えておらず、音を頼りに探してくる。BTに見つからないように静かに通り抜ける必要がある。
不気味な湿地帯や廃墟で不気味な黒い雨が降り、幽霊みたいなBTに見つからないように進むステルス&ホラーなゲームになります。ヘッドホンでプレイすると最高でした。雨音とうめき声が良いです。
ただ、このシチュエーションに慣れると底は浅くもある。何度もBTの座礁地帯を通過しますが、さほど大きな変化はない。血液グレネードで簡単に倒せちゃいますし。
やや退屈な戦闘
小島監督がインタビューで「匿名なのをいいことに、他人を心ない言葉で傷つけても何とも思わない人たちがいる。ゲームにしても、ネットにつながって何をするのかというと、銃で撃ち合ったりしているわけです。」「ぜんぜんゲームが変わっていないということです。ゲームがオンラインになって、無人島で戦ったり、協力して共通の敵を倒したり、それはそれでおもしろいんですけど、その先がないじゃないですか。」と言っているので、『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』は戦いを重視したゲームではないです。
とは言っても戦いもあるわけですが、戦闘部分はやや退屈な出来でした。
巨大BTの“キャッチャー”も大差なく、足場が悪い中で攻撃を数発当てて潜らせる→出現したところにまた攻撃を当てる、という繰り返し。
TPSらしい対人の銃撃戦もありますが、単調なAIとシンプルすぎる銃撃戦で65点のTPSという出来。
戦いを重視したゲームではないとは言え、終盤は戦闘機会も多いですから、もう少し作り込んでほしかった。
ゲームの難易度は低く、VeryEasy/Easy/Normal/Hardという4つの難易度がありますが、Normalでプレイすると他のゲームでならVeryEasyかEasyなんじゃないかと思うくらい簡単でした。簡単なので戦闘がストレスになる事はなかったです。爽快に無双できた。
戦闘を重視したゲームではないし、MGSみたいなゲームでもまったくない。ここの誤解が一番怖いところなんじゃないかなとも思う。
面白いのは人を殺してはいけないところ。殺すとヴォイド・アウトを起こして周辺がクレーター化してしまう。この仕様のため「痛めつけるのはいいけど殺すのはダメだよ」と意識させられる。高性能な武器で非殺傷弾と殺傷弾を切り替えられる武器もありますが、間違わないようにワンランク下の非殺傷弾のみの武器を持ってプレイしました。人を殺すゲームが多い中、面白い仕様だと思いました。
小さな不満点
- ムービーのスキップが細かい
例えばシャワーに入るとムービーが挿入されるわけですが、スキップしたくてもOPTIONS→SKIPの操作を最大4連続でやらないといけない。何度も見せられるムービーで、連続2回以上のSKIP操作が求められる事が多いです。 - オドラデクが見難い
BTを感知するパタパタがオドラデク。これがサムの体や荷物に隠れてしまったりして見難い事が多々あった。 - 国道の上でもBT出現の演出が入る
国道はノンストップでカッ飛ばしたい。
期待以上の出来
期待と不安のあった『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』でしたが、期待以上の面白さと衝撃で満足です。配達とルート作りと繋がりが新鮮で楽しく、先が気になるストーリーもあり、止め時がなかったゲーム。ミュールの設定に関して「配達依存症ってなんだよ(笑)」と思っていた自分が配達依存症になる面白さ。
不満は戦闘面ですが、簡単だったので嫌なものではなかった。
戦闘が簡単な事もそうですが、全体的に遊びやすかったです。スタミナ/BBゲージ/靴底の管理も易しめでしたし、プライベートルームに入ると銃弾は補充されるし、車両も修理される。建設に関しても建物自体には電力の概念がなく、複雑さをカットしているように思います。新たな要素を少しずつ加えているのも特徴的で、変化が加わる事でダレにくいし、ゆっくり覚えられるのもプレイしやすさに繋がる。
配達+繋がりをメインにした新しいゲームですが、粗さも荒さもなくて洗練されている印象。操作性も非常に良かった。挑戦的な新規IPで、ここまで洗練されたゲームが作れるのは凄い。
クリアまでゲーム内時間で40時間以上かかりますが、クリア後も楽しくてボリュームにも大満足。今は全NPCの親密度を最大にするのを目標にプレイしていますが、そのためには交通網を仕上げる必要があり、その作業がめちゃくちゃ楽しい。
謎に包まれていた新規IPでしたが、ゲームとして面白くて遊びやすい。映画的な演出や作風もあり、それも優れた部分ではありますが、それ以上に配達と繋がりを軸としたゲームシステムの面白さやバランスや遊びやすさが凄いと思った。映画的な演出は映画畑の人なら作れると思いますけど、ゲームとして仕上げる力のほうに小島監督の凄さを感じるし、やはりゲームクリエイターですね。バグらしいバグに遭遇しなかったのも良いですし、バランスの調整も含めてちゃんと作られているなという印象でした。
『SEKIRO』『バイオハザード RE:2』『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』が2019年のGOTY候補と言える。デスストはこの規模の超大作でイノベーションがあるのが強いですね。
コメント
>>garbegamemoさん
プレイ中に「これVRで遊べたら最高だなぁ」とは思いましたけど、そういう話は聞かないですから叶わぬ夢なのかなと思っています。
でもVRに最高にハマるゲームだと思います。
操作体系見るとVR対応を考えてる気がしますがどうでしょうか
小島監督が各所で「開発規模はあくまでインディーズ」と言っていた事が印象に残っており、いざプレイするとすぐ納得出来ました。
ミニマルなシステムの中で最大限幅を出そうとする理念はインディーズゲームそのものです。
しかしDECIMAエンジンの美麗グラフィック、豪華出演陣、RDR2並みの宣伝量でAAA級タイトルを想像してしまうのも事実であり、賛否両論も致し方なしと思います。
日本ではまだまだインディーズゲームに手を出す人が少ないのでこのゲームを機にコンパクトな作品を好きになる人が増えたらいいなと思いました。