ファミコンの仕様内で制作されたこだわりの『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』感想


2019年6月20日にリリースされた『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』の感想。

こだわりのあるファミコン風ゲーム

  • ファミコンで発売されていた様々なアドベンチャーゲームをリスペクトした8ビット感が溢れるレトロアドベンチャーゲームです。
  • ファミコンの風合いを完全再現するため、ファミコンの実際の仕様内で制作されています。

というこだわりのファミコン風ゲームです。キャラクターデザインに荒井清和氏を起用していますので、1987年にファミコンソフトとしてリリースされた『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』のイメージがありますね。

 

ファミコンの実際の仕様内で制作されているというくらいですから、画面比率は4:3ですし、グラフィックもテキストもファミコンソフトそのまんまです。カジュアルにファミコンっぽさを出したんじゃなくてガチなこだわり。


荒井清和氏のキャラクターデザインが素晴らしく、個性的なキャラクターを描き分けている。印象的なのは年配のキャラクターですね。ゲームやアニメだと若者中心になりがちですが、このゲームは年配のキャラクターに存在感があった。シンプルな線でそれを表現できているのがスゴイし、大粒のドットで描けているのも驚き。

 

テキストの表示も特徴的です。人が喋っているようなペースでポポポ…ポポポポ…と表示される。この効果音はオジサンであれば低い音、若い女性であれば高い音になっており、ボイスが使えなかった時代の面白い工夫ですし、『ドラゴンクエスト』シリーズでも使われていますね。
上記のような仕様でテキストの表示が速いとは言えませんが、表示速度変更やスキップが不可です。ここは好みが分かれるところ。同じコマンドを何回か選択する場面もありますし、それを探すために同じセリフを何回も聞くことになる。そういう場合にテキスト表示が遅いのは少しやっかい。もちろんバックログもない。こだわりゆえに現代的な便利システムは、あえて入れていない感じ。
テキストの大きさは標準/拡大の切り替えが可能です。

 

ドット絵とテキスト表示と効果音でキャラクターに命が吹き込まれている。ハード性能が低かった時代に、その限界ギリギリで表現力を高めていったんだろうなぁと想像できます。それを想像させるほど、ファミコンっぽさにこだわった作品であるとも言えます。

現代的な親切設計もある

基本的にはファミコン風ゲームとしてのこだわりがありますが、現代的な親切設計でもあります。
例えば1つのロケーションで必要な情報が得られていなければ、移動しようとしても「もう少し〇〇さんの話を聞きましょう」と言って止められることもあるし、間違ったコマンドを選択したときに「〇〇してみましょう」とアドバイスされることもある。全てではなくて、ある程度自由にロケーション移動できる時もありますし、ノーヒントの時もある。でも詰まりにくい易しい設計になっている。コマンド選択によるバッドエンドもないので、コマンド総当たりで進行できる。選べるコマンドも多くないので進めやすい。
パズル的なところもなくて、推理ゲームにありがちなカーソルを動かしてあやしいポイントを調べるシステムもありません。メインストーリー外のお遊びでは1シーンだけありますけどね。

 

易しめの難易度でストーリーと雰囲気がメインのゲームとして大変良いと思いました。クラシックなコマンド選択式アドベンチャーの魅力が味わえるけど、面倒くささは感じにくい。反面、突き放したような難易度の中を手探りで打開したいという歯応えを求めていると肩透かしとも言える。

 

昔のゲームでも進めやすさを意識した親切設計のゲームはあったと思いますが、レトロゲームは少し突き放したような設計と難易度の印象があり、この迷いにくさは現代的に感じた。

こだわりの説明書

OPTIONSメニューで取り扱い説明書が閲覧できます。これもファミコン風の説明書。真ん中のページにはホッチキスもあります。
取り扱い主題歌を開いている時にBGMとして主題歌が流れるのも面白い。
このゲームはシステムによる決定ボタンの変更に対応しており、それも説明書に反映される。

及第点のストーリー

ミステリーゲームとして最重要でもあるストーリー。主要キャラクターに秘密があったり、ウソがあったり、新たな事件が起こったり、もちろん犯人を自分で推理する楽しさもある。推理物としてツボを押さえたストーリーでした。
推理物として一定の面白さはあるけど、突き抜けた盛り上がりや驚きはなく、70点くらいの及第点という印象。ファミコン風ゲームとしてのこだわりが満点なので、それに及第点のストーリーが乗っかっていれば、トータルでは良いです。

 

序盤と中盤は先の展開を気にしながら楽しめましたが、個人的にはオチが弱かったと思う。犯人とその動機に納得しにくく、リアリティや説得力に欠けた印象。

 

伊勢志摩を舞台にした旅情ミステリーとしてのバランス感覚は良かった。『√Letter ルートレター』のようなくどさはなく、事件を追っているけど自然な旅っぽさもあり、そこに住む人とのふれあいがあったり闇も感じられる。ホテルの近くにある居酒屋が即席の行きつけになるのも印象的でした。


次回作は東北エリアのどこからしいですが、どんなふうに東北が描かれるか、感じられるかというのも楽しみにできる。

リモートプレイとの相性も良し

iPhoneでのリモートプレイとの相性も良いです。画面が4:3なのでボタンも左右のスペースに配置されますし。

クリアまで4~6時間ほど

普通にプレイして初回4~6時間ほどのプレイ時間になるかと思います。2周目の特典はありませんのでリプレイ性は高くない。
トロフィーも易しめですから、2周目でコンプリートを狙うのも良いでしょう。
『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』トロフィー攻略 – PS4ちゃんねる Pro
個人的にも深夜1時に最後のトロフィー条件を探して何度も露天風呂に入ったのは思い出に残ります。

 

1,000円で1周+トロフィー回収が楽しめたのでボリューム的には満足ですし、丁度良いです。1本のミステリーで時間が長すぎてもダレますし、低価格で4~6時間というスタイルが増えていってくれれば嬉しい。
1,080円じゃなくて1,000円という価格も好印象。ダウンロード版ゲームは税込でキリが良い数字が嬉しい。ソフトが少ない6月に発売した判断も良いですね。今年も8月下旬からは波に飲まれそう。

 

クラウドファンディングが目標達成して第2弾の制作も決定したようです。現時点で約450万円/300人。2019年7月末まで支援を受け付けています。5,000円でスタッフロールに名前が掲載されるのは魅力的に感じました。ゲームをクリアしてスタッフロールを見る楽しみがあるのは特別なことです。

第1弾でファミコン風ゲームとしてのこだわりを見せてくれましたし、旅情ミステリーとしての雰囲気も良かった。こういう明確な魅力があるゲームは良いですね。こういう味を求めている人が購入していて、Twitterの反応も良いです。
偽りの黒真珠 – Twitter Search

第3弾以降も続いてほしい魅力がありました。

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