2018年9月18日に北米Storeでリリースされた『Transference』($24.99)の感想。
北米版ですが、日本語テキストと日本語音声に対応していました。決定ボタンは×ボタン。日本国内でのリリースは11/1か11/2になりそうです。私は完全にVRゲームとしてプレイしましたが、非VR環境でもプレイ可能なゲームです。
基本操作
× | インタラクト |
〇 | 持っている物を手放す |
□ | カメラリセット |
L1/R1 | ダイヤルを回す |
L2/R2 | 持っている物を注視 |
L3/R3 | しゃがむ |
左スティックで自由移動が可能です。VRの設定もしっかり揃っている。こういう設定がしっかりしているのは、優れたVRゲームのバロメーターにもなりつつある。
キャラクターの移動スピードは遅いですが、スピードは必要ないゲームなので不便は感じませんでした。
P.T.+Gone HomeのVRゲームみたいな
開発者のインタビューで日本のホラー作品から影響を受けていると言っていましたが、『P.T.』や『Gone Home』を軸にしてVR化したという印象があります。『P.T.』っぽいのはループとそれによる少しずつの変化ですね。色使いや雰囲気自体も近いものがありますが。
安易なジャンプスケア(ビックリさせる系の驚かし)は使わず、雰囲気と音で怖がらせてくる。このスタイルとVRの相性が最高であり、最初は歩くだけで足が震えるような恐怖があった。正直、最初の10分くらいで「VRだと怖すぎるから1周目は非VRでやろうかな」と思ったほど。VRだと「そこを歩く、という恐怖 」が強いので、ジャンプスケアに頼らずとも極上の恐怖体験を提供できる強みがある。
クリアするまでの時間は1時間30分~2時間であり、映画1本分くらい。$24.99のゲームとしてはボリュームは少ないと言える。
でも細かいところにいろいろネタを仕込んでいる印象で、隅々まで探索したり、ループの中で少しずつの変化をチェックしながらプレイする楽しさもある。この空き家探索は『Gone Home』の感覚に近かった。そこに残されている物から事件(?)の背景を推測する。プレイ時間と価格も『Gone Home』に近いですしね。
設定はありがちな気もしますが、そのありがちな設定の世界でもVRで体験すると別格の怖さになる。
収集要素としてビデオログがあります。集めたビデオログはメニュー画面から再生できる。これを視聴すると、より深くこのゲームの世界を知ることができます。幸せな家族のように見えて歪みを感じられたりもする。
このゲームは、何がどうしてどうなったというストーリーを楽しむというより、サイコスリラーとして人間の狂気を覗き見るほうがメインのように感じるので、その奥深さを増す要素になっていると思います。
俳優のイライジャ・ウッドが制作に協力しているだけあって、映画的な作り込みは流石だと思う。映画だったら1回観ただけでは気になる点が多く、何度か観たくなるような映画。
非戦闘型の探索&パズル
戦闘、ステルス、アクションはなく、アパートの1室で探索とパズル。部屋は6部屋くらいですが、2つの世界とループを使って変化を生み出している。
照明のスイッチを押すことで、落ち着いた世界と狂った精神世界のような世界とに切り替わる。この切り替えの使い方もパズル的です。
謎解きの難易度は低めで、丁寧に調べていれば問題なく解ける。ゲーム進行のテンポを重視した感じです。謎解きゲームがしたい人には大きな不満になるかと思いますが、個人的には良かった。難しい謎解きとかステルスとかアクションとか、ゲーム的な部分を省いて正解だったと思っています。
グラフィックは最高クラス
PSVRゲームの中では現在の最高クラス。アニメ系じゃなくてフォトリアル寄りのグラフィックでここまで出来るのは凄い。AAも効いていてチラチラしないし、テクスチャや全体のバランスも良い。とても技術力が高いと感じた。
暗さで怖がらせてくるわけではないところもセンスある。見やすいです。
お気に入りの1本
『Rez Infinite』『The Elder Scrolls V: Skyrim VR』『バイオハザード7 レジデント イービル』『The Persistence』『Pixel Ripped 1989』『Firewall Zero Hour』『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS ORANGE CASE』ら、個人的にお気に入りのVRゲームグループに仲間入りした1本。これらとジャンルが被らないので、このジャンルにおいては最高の作品。
サイコスリラーをVRに落とし込むという狙いがハマっており、狂気や恐怖や不安が感じられる世界をVRで体験できるのは今までにない感覚。技術的にも優れている。『P.T.』を薄く下地にしている印象はあるものの、独自の味付けで仕上げており、『Gone Home』で高く評価されたナラティブも溶け込ませていて、探索と想像の面白さも良い。サイコスリラーの味を沁み込ませる。よく素材と料理人の例えがありますが、これは素材の選択も料理人も良かった感じです。製品版に繋がらなかった『P.T.』への思い入れもあり、それが生きているようで嬉しくて、ちょっと好意的に見たところもあると思います。
サイコスリラーをVRで体験することを重視していて、ゲーム的な要素が軽めなのは好みが分かれると思う。個人的には、あまりゲーム的な歯応えを出し過ぎると、この雰囲気に浸りにくくなるという気がするので、良い選択であったと思う。
設定的にはありがちなので、これが映画だったら凡作だったかもしれない。オーソドックスなものだけど、今回はVRで初めて体験できるから特別なものになっていました。逆に言うと非VRなら、あまり魅力は感じないゲームかもしれない。
$24.99でクリアまで1時間30分~2時間はボリューム不足と感じる人が多いと思う。ただ現状、他では替えが利かないVRゲーム体験なので、個人的には大満足。こういう凄い体験がしたくてVRゲームをやっていますのでね。
良いVRゲームが立て続けにリリースされて嬉しい限り。VRでの実況プレイを見たいゲームでもあります。